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La traversée du phare (TV) 灯台へ

フランス映画 (1999)

映画製作時はフランスで現存最古で最大、現在は 世界文化遺産になったコルドゥアン灯台を舞台にした感動の名作。主人公は、両親を亡くし、里親の間をたらい回しされている間に、だんだん擦れていった、ある意味 問題児のエリックと、同じように両親を亡くし、叔母に引き取られ、ホモでもトランスジェンダーでもないが、ジェンダーレスの傾向のあるヤン〔本当の名前はマリー〕。社会から除け者にされた者同士の間に芽生えた深い友情が、心ない人間により一旦は引き裂かれるが、それを乗り越えて2人は再び強く結びつく。そこに、灯台がうまく結びつき、第三の主役になっている。こうした名作が、TV映画として作られたことも驚きだ。そして、映画が非常に好評だったため、何と、2年後に、全く同じ配役で、続編まで作られている。非常に珍しい事例と言えよう。惜しむらくは、DVDが発売されていないため、紹介する画質が極端に悪いこと。

いつもは、ここに映画の概略を載せるのだが、今回は、あまりに微に入り細に入りあらすじを書いてしまったので、ここでは、非常に簡単に記載するに留める。
① 孤児のエリックが転校してきて、ちょっと変わった男の子ヤンと知り合う
② エリックはヤンに誘われて灯台に行くが、その途中、ヤンが女の子だと分かる
③ ヤンは、灯台行きの騒ぎの責任を問われ、女子校行きを示唆される
④ ヤンの育児能力を問われた叔母に、灯台守の旧友が援助の手を差し伸べる
⑤ ヤンが男の子に虐められるのを見たエリックが助けようとして相手にケガさせる
⑥ エリックは里親から逃げようとして暴行を受けるが、里父を骨折させる
⑦ エリックは、矯正院に送致される。別れ際、2人は手紙を交わす約束をする
⑧ 矯正院でエリックは、厳しいなりに彼を理解してくれる上級生と親しくなる
⑨ エリックとヤンの間の手紙が、突然、お互いに届かなくなる
⑩ ヤンは、手紙が途絶えたので、食欲失い、最後には失神して入院する
⑪ エリックは、ヤンに会うため、矯正院から脱走する
⑫ エリックはヤンを病院から連れ出し、コルドゥアン灯台に連れて行く
⑬ 2人の捜索が大々的に行われる
⑭ 2人が灯台に行ったことが分かり、叔母の恋人となった灯台守が船で後を追う
⑮ 嵐が船を襲い、落雷で灯台の光が消えるが、2人が石油ランプで代用させる
⑯ 2人は、捕まるくらいなら灯台から飛び降りて自殺しようとするが、叔母の「誰にも仲は 裂かせない!」の言葉で思い留まる。

この結末は、2人は、直に結婚する叔母と灯台守の養子として4人で一緒に住むであろうことを予測させる。ところが、この続編の『Les inséparables』(2001)は、その題名「切っても切れない」から、一緒になったエリックとヤンの愛の物語かと思ったら、全く違っていてがっかりした。エリックは、なぜかまた矯正院に戻され、ヤンは、マリーになりきってしまっている〔つまり、普通の女の子になってしまっている〕。そして、映画の焦点は、18歳になって矯正院を出ることになった、矯正院の “ボス” と2人の手下の行動に移ってしまう。まともに生きようとするボスと、盗みで生きて行こうとする2人。両者は決別するが、2人の悪事にボスが巻き込まれ、悪人として追跡される。それを助けるのが、時々週末にマリーにお泊まりで会いに行けるエリック。だから、題名のLes inséparablesは、エリックがマリーと「切っても切れない」のではなく、ボスと「切っても切れない」の方の意味になっている。因みに、灯台は一切出て来ない。下の写真は、エリックとマリーの一コマ。2人は、この映画とあまり変わっていない。
  

ヤンは、女の子だが、男の子そっくり。だから、例外的措置として、ここでは、エリックと一緒に紹介する。エリック役のジム・レッドラー(Jim Redler)は1986年7月19日生まれ。TV映画なので、1999年1月27日の放映なら前年の秋の撮影だと考えれば、撮影時12歳。映画の設定の10歳よりは2歳年上。彼は1988年(2歳)からTVに出ていて、TV映画は、1996年が最初。2作目の『L'enfant perfu(失われた子供)』(1997)は、将来紹介する対象となっている。本作品は、TV映画としては3作目。その後もTVだけで2010年まで活躍した。ヤン/マリー役のキャティ・ロワゼル(Katty Loisel)は1986年10月1日生まれ。撮影時は11-12歳のどちらか。彼女は、この作品が最初の映画出演。その後は、1作を覗きTV中心で、2007年が最後。

あらすじ

映画の冒頭、この映画の舞台となるコルドゥアン灯台〔1584~1611年にかけて建造された高さ67.5mの灯台。2021年にユネスコの世界文化遺産に登録された〕をバックに、オープニング・クレジットが始まるが、その最初に、灯台を挟んで表示されるのが、主役の子役2人の名前(1枚目の写真)。この灯台は、フランス(世界)で一番有名な灯台なので、多くのサイトがあるが、ここでは、https://www.royanatlantique.fr/2021/07/26/phare-de-cordouan-patrimoine-unesco/ に掲載された写真を2枚目に添える。このサイトには、なかなか洒落たYouTube映像もあったので、解説を日本語にして刷り込んだものを、次をクリックすれば見られるようにしておいた(→ コルドゥアン灯台の紹介
  
  

エリックの独白が流れる。「これ、今年、何回目の転校? 2回? 3回? 覚えてられない。毎回、最初から やり直し。まず 名前、それと 転校の理由。もう、うんざりだ」(1枚目の写真)。授業の冒頭、教師がエリックを紹介する。「新しくクラスに入ったエリックだ。アフリカから、フランスに帰ってきた。学校に慣れるよう、助けてあげなさい」。そして、「席について」と指示するが、エリックが向かった先の最前列の男子生徒は、空いている席に自分のカバンを置き、エリックが座るのを拒否する。4列目の空席も、意地悪な男子生徒が同様に拒否する。その後ろ、最後尾は空いていた。そこに座ろうとしたエリックを見て、4列目の意地悪は、「ヤンと一緒なら、お似合いだ」とニヤニヤしながら言い(2枚目の写真)、生徒達が笑う。教師は、「静かに」と注意すると、「君は、ジルの横に座りなさい」と指示し、意地悪はカバンをどける。「エリックは、ノートに個人データを書きなさい」。「いつも、そこは空欄のままだ」。エリックがジルに、「定規、貸せよ」と頼んでも、たちの悪い意地悪は、完全に無視。後ろのヤンが、定規を差し出し、「代わりに、アフリカの話を」と言う(3枚目の写真)。嫌な教師は、「助けてあげなさい」の指示に反した1列目と4列目の生徒の行動に注意もしなかったくせに、小声で話したヤンの親切な言葉には、「ヤン、静かに」と注意する。
  
  
  

授業時間の合間、狭い校庭でエリックが1人でベンチに座っていると、同じクラスになった生徒2人が寄って来て、「よお ターザン、ジャングルは どうだった?」。「ライオンやトラ、いたか?」と訊く。エリックは、「トラは、アフリカには いない」と冷淡に答える(1枚目の写真)。すると、ヤンが、「雲に届くような大きな木が あるんだろ?」と訊く(2枚目の写真)。この言葉に対し、2人のうちのメガネは、「こいつ、キ印なんだ」と ひどいことを言い、すぐに、ヤンが、「キ印は、そっちだ。セコイヤって木がある」〔セコイヤは高さ100mに達するが、アフリカではなくアメリカにある〕と、反論。そこに、4列目の意地悪が加わり、「マンガの見過ぎだ」と批判。エリックは、定規を貸してくれたヤンを救おうと、「セコイヤはある。それに、バオバブも」〔バオバブは高さ30m程度だが、アフリカの木〕と、セコイヤのミスを嘘で庇う。「ヤン… なぜか、彼には、嘘をつきたくなかった」。帰宅時間になり、ヤンは、誰もいないクラスにこっそり戻ると、教壇の中から生徒全員の個人データを取り出し、エリックの紙を取り出す(3枚目の写真)〔矢印は、それを見ているエリック〕。ヤンは、その紙を、ジャンバーの中に隠す。ヤンが、担任と校長の前を通って行った後、校長は 「変わった子だ。『君』 と呼ぼうか。『さん』 と呼ぼうか、いつも迷う。眉をひそめる 親もいる」と担任に言う。担任は 「いつも一人だから、心配ないですよ」と、無責任に返事をする〔だから、さっき、エリックをヤンの隣に座らせなかった〕
  
  
  

帰り際。エリックはコンクリートの段の上に座り、ヤンに好意的な目線を送るが(1枚目の写真)、ヤンに無視される。それを見ていた担任は、「おい、ここで寝るのか?」と、早く帰るようエリックを促す。エリックが行った後で、口の悪い校長が、「ボケっとした子だ」と批判し、担任が 「時差ボケでしょう」と言うと、「時差ボケって?」と訊き返す。「アフリカから、転校して来たから」。「彼は、問題を起こす度に、転校を。アフリカは無関係。調書には そう書いてある」。エリックが、海岸沿いの遊歩道まで来た時、さっき声をかけた3人組が、「サッカーやるか?」と エリックに声をかける。エリックが、「ヤンもやる?」と訊くと、「男の競技だぞ」と 変なことを言う。そこで、エリックは、「戻らないと。おばあちゃんが待ってる」と嘘を付く(2枚目の写真)。そして、「ヤン、待てよ!」と、後を追う〔この場所のロケ地は、プラージュ海岸(Plage du Bureau)という入江の村〕。次のシーンでは、沖合にコルドゥアン灯台が見え、それを砂浜に座った2人が眺めている。ヤンは、「あそこに、友だちが住んでる」と言って指差す(3枚目の写真)。ただ、プラージュ海岸に近い岬の先端から灯台までの距離は8.3キロ。グーグルの定点写真で、灯台が唯一映っていた4枚目の写真は、全く別の場所〔灯台から最短の7.5キロ〕で、拡大処理しても灯台は、丸い円の中の点くらいにしか見えない。「灯台に? 一人で?」。「うん。時々 会いたくなる」。「ボートが要るな?」。「引き潮の時、秘密の通路が」。「秘密の通路? 知ってるの?」。「通路を教えたら、アフリカのこと話してくれる?」。「いいよ」。「じゃ、土曜に港で。引き潮は、正午」。
  
  
  
  

そして、土曜日。2人は、動物園を経営しているヤンの叔母が、港で漁師から魚を買っている所で合流する(1枚目の写真)〔ロケ地は、プラージュ海岸の東南東5キロのロワイヤン港(Port of Royan)〕。叔母が「ルゲレック、行き先は?」と訊き、ヤンは 「コルドゥアンまで」と答える。叔母が「気をつけて」と言うので、この港から11.8キロ先の小さな島にある灯台までは、“気をつければ行ける” という設定になっている〔サイトを探しても、灯台への訪問は干潮時のみで、それも、水陸両用の船で島の近くまで行き、それから砂州の上を長距離歩くというもので、すべてを歩いて行けるという情報はどこにもなかった〕。ヤンは低い崖まで行き、「ほんとに行きたい? 遅れると、間に合わない」とエリックに訊く(2枚目の写真)。エリックは、崖をぴょんと飛び降りると、行く気を見せた上で、「ルゲレックって?」と訊くが、ヤンも飛び降り、「なぜ、エリックなの?」と答えをはぐらかす。「僕の、名前だから」。「僕もさ」。その後、2人は古くなって壊れた木の桟橋の下を通り、さらに沖合に向かって岩場を進む。そして、岩場は海にぶつかる(3枚目の写真)。「見てないで、飛び込めよ!」。「これ、正しいルートなのか?」。「怖いなら止めろよ。おばあさんも、喜ぶ」。「祖母なんか いない。僕のノート見たくせに、知らない振りするな」。「僕の家には、誰もいない。誰にも話してない」。そう言うと、ヤンは海に飛び込む。水深は腿くらい。それを見たエリックも飛び込む。
  
  
  

2人は、その先の洞窟状の穴を通り抜ける。「これが、秘密の通路?」。「そう」(1枚目の写真)。2人は、そのまま先に進むが、灯台までは海しか見えない。ヤンが、「潮が上がってる。秘密の通路へ、急ごう!」と言って走り出す。この場面がよく分からない。走り出す方向は、それまで進んできた方向なので、先ほどの「秘密の通路」に戻る訳ではなさそうだ。そして、第2の秘密の通路まで行くと、その洞窟通路は、海水で9割水没していて、波も荒い。「通路がふさがってる。泳ごう!」(2枚目の写真)。「泳げないよ!」。「なぜ、黙ってたの? 通れるか見て来る」。そう言うと、ヤンは海に飛び込んで泳いで穴の中に入って行く。そして、手を伸ばして、エリックに、「手をつかめ!」と言う。そして、2人は穴を通って外に出る。岩場に最初に這い上がったエリックが、ヤンをつかんで引き上げる時に、シャツをつかんだので胸がはだける(3枚目の写真)。「上げ潮だ。もう、この道は戻れない。でも、僕の頭にあったのは、ヤンが女の子だったこと」(4枚目の写真)。
  
  
  
  

次のシーンが全く理解できない。2人は、「秘密の通路」を2つ通って沖合に向かったハズで、もう戻れないところまで潮位が上がっている。それなのに、2人は、高い崖をよじ登り始める。そして、そのてっぺんに立つと、崖のぎりぎりと所に立つ(1枚目の写真)。ヤンが 「落ちちゃうよ。怖がらせたいの?」と訊くと、エリックは、「君の名は?」と訊く。エリックが落ちるといけないので、ヤンは通称ではなく、本当の名前を教える。「マリー」(2枚目の写真)。エリックが、「落ちるの、怖くない?」と訊く(3枚目の写真)。ヤン/マリーは、「君が落ちたら、僕も落ちる」と答える(4枚目の写真)。「僕を、信じてる?」。「うん」。「風、強いな」。「風になれるといい」。2人は、崖を降りると、灯台への砂州が伸びている」〔これは、映画の上での作り話であろう。このような特殊な崖は、フランス本土側には存在しない〕
  
  
  
  

その後、2人が水没しそうな細い砂州の上を走って行く姿が映る(1枚目の写真、矢印)。1枚目の写真でも分かるように、砂州の先端は水没している。だから、2人が進むと、浅瀬の上を歩くことになり、極めて危険だ(2枚目の写真)。灯台守の男性が、それを見つけてモーターボートで助けにきてくれる。ヤンとは顔見知りだ。「こんな所で、何してる?」。「灯台に 行くトコ」(3枚目の写真)。「歩いて? 行けると思ったのか?」。「砂洲を歩こうと…」。「100回は溺れるぞ。引き潮だったから発見できた」。
  
  
  

それには答えず、ヤンは、「昔、話してくれたよね。海は美しいって」と言う(1枚目の写真)。「私には、灯台しかなったから。ただの昔話だ」。「知ってるよ。それに、父さんが灯台を好きだったコトも」。「灯台に行きたいなら、出発だ」。コルドゥアン灯台のある島に上がった2人は、灯台に向かって手をつないで走り出す(2枚目の写真)。灯台の真下まで行き、2人は灯台を見上げる。灯台守に勧められて、2人は、灯室の下の手すりまで上がる。「ここからなら、世界の果てまで見える」。「降りるぞ。夜になる前に戻らないと」。モーターボートまで戻ると、灯台守は、「そのままでは、ずぶ濡れだ」と言い、「これ、着て」と、自分が来ていた灯台守の防水服を渡す。ヤンは、「父さんは、男の子が欲しかった。黙ってて くれる?」と訊く。エリックは 「当然だろ」と言って濡れたシャツを脱ぐ。それを聞いてヤンもシャツを脱ぐ。「砂州歩いたの、これが初めてさ」。「アフリカなんて、行ったコトもない」。お互いに白状すると、笑顔になる(3枚目の写真)。ヤンが、「寒いよ」というと、灯台守の防水服を着たエリックが ヤンを抱いて暖める(4枚目の写真)。モーターボートは、2人を舳先に乗せて港に向かう。
  
  
  
  

港には、叔母が車で迎えに来ていた。辺りは、もう暗くなっているので、「どこに行ってたの? あちこち探したのよ」と心配する。「今朝、灯台に行くって言ったよ」(1枚目の写真)。「てっきり、ボートかと」。「ボートなら、安心した?」。「こんな事、二度としないで。嘘付きは良くないけど、自分を偽るのは危険な事よ」と叱る。そして、灯台守には、「電話ありがとう。すごく心配してたから」と、お礼を言う。「電話は彼女〔ヤン〕の考え。俺は電話を貸しただけ」。「あなた、灯台守の方?」。「レインコートとパイプの老人だと思った? 僕は、そんなに変わったか? ラ・ロシェルのヨット・スクール」。ここまで話し、叔母はようやく相手が誰だか気付く。「ピエール?」(2枚目の写真)「ほとんど会えなかった。あなたは、レース用ヨットに付きっ切り」。「町を出たんだと、ばかり…」。「君と僕とじゃ、住む世界が違ってた。彼女〔ヤン〕の父親は、いい船乗りだった」。「私の兄さんよ」〔これで、叔母だと分かる〕。「知ってる」。こうしたやり取りを、ヤンとエリックは楽しそうに聞いている(3枚目の写真)。
  
  
  

エリックは、ヤンの叔母のジープで里親の家まで送ってもらう。門から入り、玄関のドアを開けて中に入ると、里父が、「遅いな。どこ 行ってた? その服は どうした?」と訊く(1枚目の写真)。エリックは、「友だちと映画見てた」と嘘を付くが、黄色の防水服については説明しない。それでも、里父は、「黙って行くんじゃないぞ」と言っただけ。その時、顔を見せた里母は、「うっかりしてたのよ」と庇うが、怖そうな里父は、「学校が終わったら、真っ直ぐ帰って来い」とエリックに言い、里母には、「お前は甘いな。きっちり躾けて、叩き直してやる!」と言う。自分の部屋に行ったエリックは、借りた防水服を畳むと、カバンに入れる」。それを見た里母が、「戸棚 使っていいと言ったのに、なぜ、旅行鞄に詰めてるの?」と訊くと、「すぐ出てけるように」と答える(2枚目の写真)〔この時、エリックの背中に傷は付いていない〕。「出てくって?」。「『出てけ』 と、言われた時のため」。「こんなに心配してるのに、あなたは知らんぷり。なぜ、そんな態度を?」。エリックは、何も答えない〔こんな態度では、最初から嫌われる〕。里母が、ベッドサイドの照明を、「消して欲しい?」と訊いても、無言。里母が出て行くと、自分でスイッチを消し、「食費が浮いたから、嬉しいだろ」。翌日、授業が始まって、エリックが後ろを確認すると、ヤンがいない(3枚目の写真)。
  
  
  

席を立って見てみると、ヤンが叔母と一緒に歩いて来るのが、窓から見える。担任は、始まった試験について、「全部できたら、外に行っていい」と言ったので、ヤンのことが心配になったエリックは、すぐに用紙を埋めて教壇まで持って行き、「間違ってる?」と訊く。「すごい。転校したばかりなのに、大したもんだ。お行き」。エリックは、すぐに教室から出て行く。そして、仕切り板をよじ登り、天窓から校長室を覗く(2枚目の写真)。校長は、叔母に向かって、「彼女の 男の子のような振舞いは、有名です。だが、ああいう服装は、妄想を増大させます」と批判する。叔母は、「でも、今の服装に、男も女もないのでは?」と反論するが、この映画の中で一番タチの悪い “腐れ女”〔教育委員会の指導員?〕が、「服装だけでなく、あの行動自体が、先生方にまで心理的に負担を強いて…」と、言い出す(3枚目の写真)。叔母:「マリーの行動には、その種を問題を引き起こすほど異常な所はありません」。腐れ女:「他の生徒にも悪影響を。昨日の冒険が、いい例です。もし、何か起きて…」。校長:「多くの親御さんが、不安を感じておられます」。叔母:「父を亡くした少女の心が、分ってるの?」。腐れ女:「レジナ・パシス校に転校すべきでしょう」〔腐れ女は、人の話は一切聞かない〕。叔母:「でも、そこは女子校よ。あの子は…」。腐れ女:「少人数クラスの恵まれた環境で、教育過程も卓越…」。叔母:「なぜ、マリーを転校させたいの?」。腐れ女:「最高の環境で、再出発を。偏見を持っていない新しい友だちも。すぐに 順応するでしょう」。叔母:「マリーが 転校を望まなかったら?」。腐れ女:「あなたは、公認の保護者ではありません。判事が判断します。養子縁組には種々の要件が。あなたが彼女を統制できない以上…」。叔母:「あなたは、私たちがどう暮らしてるか、見もしていない。なのに、もう結論を下してる」。この後の意見が最低。腐れ女:「一々意見を聞いてたら、何も決まらない」〔この腐れ女は、独断と偏見の塊。いわば、ミニ・プーチンだ〕
  
  
  

灯台守のピエールが、叔母のいる動物園まで、ヤンとエリックの着ていたジャンバーを乾かしてわざわざ返しに来ると、叔母は 「あなたのお陰で、学校じゃ散々」と、ピエールに文句を言う。ピエールは、「誰にも言ってない。2人を連れ帰るため、港湾局に早退を申し出ただけだ」と反論する。「マリーたちが灯台へ行った事、言ってないの?」(1枚目の写真)。「なぜ、言う必要がある?」。叔母は、自分の早とちりを謝る。「ごめんなさい。助けてもらったのに非難したりして」。そして、イライラしている理由を述べる。「何ヶ月も、マリーの養育権で闘ってきたの。でも、あの子ったら、それを台無しにして…」。「君は、彼女の唯一の肉親だ。君に委託するのが論理的だろ」(2枚目の写真)。「あの人たちに論理は通じない。私は仕事に追われて面倒を見きれないし、結婚もしてないからと」。「役所の奴らは、勝手だ」。ピエールは、ここで、自分の問題も持ち出す。「奴ら、灯台を無人化して、レーダーに代える気だ。僕は職を失う」。そして、ある意味、素っ頓狂なことを提案する。「マリーの養育権を得るため、結婚するかい?」。「バカ言わないで!」。「僕が変人だと大惨事にでも? フランシス〔動物園の飼育係〕よりはマシだ。君を笑わせただろ?」。「ここで働いてる事、なぜ知ってたの?」。「長い話だ」。「(ヤンを)幸せにしようと頑張ったけど、兄の代わりには なれなかった」。「港まで 食事に行くってのは、どうだい?」。「いいわ。ほんとに 来るの? 昔 デートした時は、暑い最中、1日中 待ちぼうけだったわ!」。「今夜は涼しいぞ」。2人は、食事に行くことで合意する。
  
  

一方、学校では、ヤンは、すべてはエリックのせいだと思い込み、彼が近寄ろうとすると、「ほっといて!」と、突き放すように言う。「待てよ!」。「ついて来るな!」(1枚目の写真)〔場所は、初日と同じプラージュ海岸〕。すると、ロクデナシ3人組の1人の “メガネ” が、「例の女子が 来たぞ」と言うと、“4列目の意地悪” が、「女子じゃない、ホモ野郎だ」と言い返す。3人目:「あれは、女の子だ。賭けるか? 何が欲しい?」。意地悪:「お前の時計だ」。「君が負けたら、ナイフくれよ」。メガネ:「僕も 賭けていい?」。3人目:「じゃあ、捕まえるぞ!」。エリックは、遊歩道の塀に隠れて、砂浜での会話を聞いている(2枚目の写真)。ロクデナシ3人組は、砂浜から遊歩道に上がる、やって来たバスに乗ったヤンを追い掛け、同じバスに乗り込む(3人目の写真)。エリックは、ヤンを助けようと、バス停の近くに停めてあった自転車を盗むと、バスを追いかける。
  
  
  

エリックは、バスの最後尾につかまって速度を維持する(1枚目の写真)。しかし、最初のバス停で下りると思って手を放して道路の脇に隠れると、降りて来ないので、再びバスを追いかけるが、今度は追い付けずに離される。バスの次の停留所でヤンは降り、ロクデナシ3人組も同時に降りる。そして、メガネが 「ルゲレック、来いよ」と呼びかける。振り向いたヤンに、3人目が 「学校、好きか?」と訊く。「知ったことか」。意地悪:「お前、ホモか?」。メガネ:「父さんが、気味悪いって。お巡りさんも、そう言ってた」。ヤンは、「君の親父、マジで大バカだ!」と批判し、怒ったメガネがヤンに飛びかかる。そして、他の2人も加わり、ヤンが女性かホモか確かめようとする(2枚目の写真)。メガネが、「女だ! 勝ったぞ!」と叫んだ直後、必死で自転車をこいできたエリックが、自転車ごとメガネの背中に体当たりし、メガネが吹っ飛ぶ(3枚目の写真、矢印は自転車のぶつかった方向)。エリックは、「女の子1人に3人か? 恥を知れ!」と怒鳴り、卑怯な3人は逃げて行く。
  
  
  

しかし、ヤンは、助けてくれたエリックを、「助けなんか要らない!」と、冷たく突き放す。「僕、何かしたか? 訳を知りたい。なぜ無視するんだ?」(1枚目の写真)。「裏切り者! バラしたろ? お陰で、女子校に行かされる!」。「僕じゃない!」。「じゃあ、なぜバレた?」。「知らないよ!」。「また、嘘ついてる! なぜ、ついて来た?」。「奴らの計画、聴いたから」。「嘘だ」。「あいつら、バスにいた。僕は自転車で バスにつかまってた。君が心配だったから」。「僕を心配した?」(2枚目の写真)。「答えない。どうせ嘘つきだ」。この反語的な返事に、嘘じゃないと思ったヤンは、鼻血の出たエリックの手を取り、動物園に連れて行く。シマウマやカバを見たエリックは、「すっごい! ここがウチ?」と びっくりする。「動物園がウチだなんて! アフリカに いるみたいだ!」。「アフリカに行ったこと、ないんだよね?」。「母さんが 一杯話してくれた。だから、詳しいんだ。まだ小さいから、分からない事は多いけど、確かなのは、大人になっても、君と一緒にいたいって事」(3枚目の写真)。「鼻血、出てるよ」。
  
  
  

園内にある自分の部屋にエリックを連れて行ったヤンは、鼻血の手当てをする(1枚目の写真)。そして、1冊の本を渡し、「この本が一番好き」と言う。それは、『星の王子さま』だった。一方、園内に、さっきの “メガネ” が 父親と一緒にやって来る。元はと言えば、ヤンの性別を調べるような卑劣な行為をした張本人なのだが、エリックの自転車に跳ね飛ばされた時、後で分かるが、鼻骨骨折したことから、怒った父に連れられてやって来たのだ〔だが、なぜ動物園に? これだと、ヤンは虐めの犠牲者なのに、ヤンがメガネの鼻を折ったことになる。卑怯なメガネは、父にどんな嘘を話したのだろう?〕。メガネの父は 「親に 話をつける!」と言うので(2枚目の写真)、ヤンが悪者にされたことは確か。それを聞いたヤンは 「くそっ!」と言って立ち上がる。「知ってる人?」。「うん、マチュー〔メガネ〕の父さん。出よう!」。2人は、園内を逃げる。エリック:「警官なの?」。「じゃなくて、猟区管理人!」。2人が、狭い入口から逃げ込んだのは、ゴリラのいる所。ヤンは、すぐに、通路の下に隠れる。エリックは、ゴリラを見て、「わぁ、おっかない顔!」と驚く。「あれマック。優しいよ」。猟区管理人が後を追って通路から入って来ると、ヤンとエリックは通路を逆走し、狭い入口から元に戻ると(3枚目の写真)、鉄扉を閉め、猟区管理人を締め出す。エリック:「マック、優しいんだろ?」。「じっくり、知り合える」。ゴリラと顔を合わせた猟区管理人は、逃げようとして、堀に落ちる(4枚目の写真)。おまけに、飼育係のフランシスからは、「許可なく ゴリラに近づいちゃダメだ! 猟区管理人だろうが関係ない!」と叱られる。びしょ濡れになった猟区管理人の父が車に戻ると、“メガネ” のマチューが、「パパ、タイヤ切られた!」と言う。どうしようもないバカ父は、バカ息子がすべての根源であることを確かめもせず、「警察に連絡する」と息巻く。
  
  
  
  

2人が、海岸沿いに走っていると、多くのドイツ軍のトーチカが破壊されたまま放置されている(1枚目の写真)。ヤンは、トーチカの1つに入って行くと、手榴弾を持って出て来る。「それ何?」。「手榴弾。機雷が除去された時、 父さんが隠しておいた。お腹が空いた時、魚が獲れるように」。そう言うと、ヤンはピンを抜いて手榴弾をエリックに渡し、「さあ、投げて」と言う(2枚目の写真、矢印)〔安全レバーが外れてから爆発までの時間は短いので、ピンを抜いた手榴弾を他人に渡して投げさせるのは、極めて危険な行為〕。エリックが少し先の砂浜まで投げるが、すぐ爆発しないので、「不発弾だ。錆ちゃってる」と言った途端に爆発し(3枚目の写真)、遠くに投げなかったので、2人は飛んできた砂を頭から被ることに。「すごいな! 見つかりたくなかったら、これで魚獲りは やめよう!」。
  
  
  

「見つかりたく なかったら、外国に行かなきゃ。ラ・ロシェルで船に乗って、アメリカへ」。「この 格好で?」。「行きたくないの?」。「彼女は、事態の深刻さに気づいていない。僕は知っていた。でも、僕たちは一緒で、孤独じゃなかった」(1・2枚目の写真)〔2人の表情がいいので、敢えて掲載した〕
  
  

その後、2人は、エリックの部屋の隣の部屋に、こっそり窓から忍び込む(1枚目の写真)〔エリックの部屋には窓がない〕。ここから逃げ出して、遠くに行くためだ。エリックはベッドの下からカバンを取り出し、貴重品の入ったポーチを腰に縛り付ける(2枚目の写真)。その時、音がして、エリックは、「ヤバいぞ。誰か1階に」と言うと、ヤンに双眼鏡を渡す。「あると便利だ」。ヤンは、双眼鏡を首にかける。すると、部屋に、里父が入って来る。そして、「こそ泥め!」と怒鳴ると、ヤンの襟を乱暴につかみ、双眼鏡をもぎ取る。エリックは、ヤンがドアから逃げるのを必死で助けるが(3枚目の写真)、自分は逃げられない。
  
  
  

里父は、「覚悟しろ! 目にもの見せてやる!」と言うと、皮ベルトをズボンから引き抜き、イスに倒れ込んだエリックに向かって、「目を 伏せろ!」と怒鳴る。しかし、エリックは、目を上げて里父を睨みつける(1枚目の写真)。里父は、エリックの顔以外の部分を皮ベルトで何度となく引っ叩く。それを窓から見たヤンは、「やめろ!!」と叫ぶが(2枚目の写真)、里父はキチガイのように叩き続ける。頭に来たヤンは、スコップを取り上げると(3枚目の写真)、窓のガラスを叩き割る。
  
  
  

エリックは、ぐったりとしてイスに横たわっている(1枚目の写真)〔あとで、肩甲骨にひびが入り、背中に裂傷ができるほどのひどい暴行だったと分かる〕。すると、この暴力親爺は、ドアを開け、窓ガラスを割ったヤンをつかむと、「お前も、叩かれたいか? いいだろう! 食らわしてやる!」と怒鳴る(2枚目の写真)。それを耳にしたエリックは、渾身の力を振るって何とか立ち上がると、玄関まで行き、里父を階段から突き落とす(3枚目の写真)〔あとで、大腿骨骨折だと分かる。平均入院日数は11日。こんな悪魔のような奴は、骨盤骨折にでもなればよかったのに。それなら、平均入院日数は191日〕
  
  
  

ヤンは、エリックを抱き抱えるようにして玄関の階段を降りると、自転車に乗せ海岸まで行く。自転車から降りたエリックは背中が痛くて思わず地面に倒れ込む(1枚目の写真)。「背中が痛い!」。「僕に、寄りかかって」。ヤンは、エリックを、何とか四つ手網の小屋まで連れて行く(2枚目の写真)。この小屋が集中しているのは、ル・ピュイ・ドゥ・ロチュール(Le Puits De L'Auture)という海岸〔プラージュ海岸の2.2キロ西〕。グーグル・ストリートビューの道路から見た写真を4倍に拡大したものを3枚目に示す。なお、この四つ手網の小屋は、日本にもあり、http://blog.livedoor.jp/ に掲載されていた写真〔岡山市東区九幡〕を4枚目に示す〔フランスと日本に、こんなによく似た、しかも風変わりな物が共通してあるのは、とても面白い〕。一方、鬼そのものの里父か、ある意味優しかった里母のどちらかから通報を受けた警官隊が、エリックが盗んだ自転車を海岸で発見し、小屋に向かう。それを見たエリックは、ヤンに 「行けよ! みんな僕のせいだ!」と庇おうとする。「一体、何の話?」。「僕は、不幸招きだ。いいかい、抵抗でもしたら悲惨な事になる」。「一緒にいるから」。ヤンは、さらに、「僕は、叔母さんの養女だ。だから、君も養子に」と、解決策を提案する。「なぜ、養子に?」。「僕が、幸せになる」。エリックは、「養子は、お金のため。見返りがなきゃ、長続きしない」と、悲観的な見方をした上で、「僕の舌は呪われてるんだ。だから、嘘をつく」と打ち明ける。ヤン:「僕には、つかなかった」。エリック:「愛してるから」(5枚目の写真)。そこに、警官隊がやって来て、2人を拘束する。エリックがひどい怪我をしていることなど知らないので、全く容赦しない。強く抵抗したヤンは、2人の警官に担がれて小屋から連行される(6枚目の写真)。
  
  
  
  
  
  

ヤンが逮捕されたと聞き、叔母とピエールが警察署まで来ると、担当の警官は、「残念ですが、両親しか面会できません」と、規則を全面に出す。ピエールは、「あの子は、ロイク〔叔母の兄、ヤンの父〕の娘だ」と抗議するが、警官は 「ええ。でも、そういう規則ですから」と反対する。しかし、「私たち以外に、誰かいるとでも?」と、ピエールが矛盾を指摘と、この言葉に逆らえなくなった警官は、2人を、別室に入れられていたヤンとエリックのところに連れて行く。真っ先に飛び込んだ叔母は、「マリー」と声をかけ、ヤンは叔母に抱き着く(1枚目の写真)。ピエールは、「手榴弾だと? ホーン岬〔南米の先端〕まで聞こえただろ」と、オーバーに言い、無謀なことをしたと責める。それを聞いた叔母は、「手榴弾? 気でも触れたの?」と批判する。警官は、「家裁の判事が、お呼びです」と声をかける。エリックは、ピエールに、「手榴弾は、僕がやった」とヤンを庇い、ピエールから、「来たばかりで、よく在り処が分かったな? えらいぞ、女の子を庇うのは」と 褒められる。そして、ヤンと叔母とピエールは 家裁の判事の前に連れて行かれる。判事の隣に座っていたのは、あの “腐れ女”。判事は、「警察の調書を読みました。大立ち回りですな」と言う(2枚目の写真)。叔母は、「2人とも、両親を亡くした子供です」と庇う。判事は、「4件の犯罪行為。窃盗、暴行、公共物の破損、兵器の使用です」と言う(3枚目の写真)〔公共物の破損は、何を指すのだろう?〕。同席していた署長は、「総合的に判断して、少年が、大騒動の首謀者です」と説明し、部屋を出て行く。すると、“腐れ女” が、「かねがね 女子校に移るよう、指導を」と、判事にご注進。叔母は、「こういうケースでは、矯正院行きに?」と心配する。判事は、「それは、我々が どう判断するかによります。施設に入れる事も無論あります。マラール君〔エリック〕とは、切り離して考えます」と概括説明した上で、「記録では、一人で お住まいのようで。いつもですか?」と、叔母に訊く。「それが何か?」。「保護観察には、家族の同居が前提なので」。それを聞いたピエールは、「一緒に住んでいます」と、驚くべき発言をする。「夫婦として?」。「はい」。「登録されてますか?」。「まだですが、必要でしたら」。「では、あなたが、彼女の将来に責任を持たれる。ならば、彼女は 町に留まってよろしい。レジナ・パシス校に通う という条件で」。叔母は 「ありがとう判事さん」と言い、これで3人は解放される。
  
  
  

一方のエリック。“腐れ女” が部屋まで呼びに行くが、判事の前に行くのを頑として拒絶する。そこで、“腐れ女” は、「判事さん、来るのを拒んでます。警官を呼びますか?」と訊く。判事は、「いや。来たくないなら会いに行こう。一人で」と、問題を起こしそうな “腐れ女” を置いて、エリックのいる部屋に向かう。そして、「話したくないそうだね? だが、お互い理解しないと」と鷹揚に話しかけるが、エリックは、「したくないけど」と冷たく拒否。「君も強情だな。自動車の盗難、里親の大腿骨骨折、友だちの鼻骨骨折」。話がここまで来た時、エリックは、「友だちじゃない」と否定する。「だろうな。他にも まだあっただろ? 共通する原因が あったのかね? 最後の里親が嫌いだったのは分かる。だが、もっと前の里親は? 君は、ほとんど家族の一員だった」。判事のこの言葉にも、エリックは、「みんな そう言う。だけど、問題が起きると悪いのは、僕」と、諦め口調で言う。「マリーは、君が叩かれたと。そうかね? 捕まった時、暴れたそうだから、大した事なかったのかな?」。判事の後半の言葉に、エリックは反撥する。「あんたも同類か。考えくらい分かってる。僕の里親は、みんな立派な人たちで、結局、僕は不良で、末は監獄行きだと」。「筋が通ってる。なら、どうする?」。「僕を、矯正院に送る」。「いい推測だ」。「推測じゃない。 ガミガミ〔腐れ女〕が そう言った」(2枚目の写真)。「彼女の決定じゃない。私のだ。他に方法があるかね? いいかい、君が決めさせたんだ」。
  
  

叔母は、ヤンが盗んできたエリックの個人データの紙を、ベッドの横で見てみる。「エリック・マラール。両親とも死亡」(1枚目の写真)。ヤンが眠ると、叔母は、居間にいるピエールの所に行く。ピエールは、「2人には 大変な日だった」と言う。「兄が生きてたら、こんな事には… きっと、2人は悪くない。私が及ばなかったのよ」(2枚目の写真)。「誰でも、こんな時は、何かと 理由を探すものだ」。「あの子、変に冷たくて」。「不幸な時は心の支えが。君以外、誰が支えてやれる?」。「精神分析医に診せた方が?」。「いいね。いじくり回されるぞ〔『ルドヴィックの世界』では、愚かな女医によって、ルドヴィックは “いじくり回され” た〕。君だけが、立ち直らせてやれる」。
  
  

ヤンは叔母に連れられて、ロワイヤン港から出港しようとするフェリーに乗せられたエリックに会いに行く。ヤンは、「もう、暗記したから」と言うと、埠頭からフェリーに向かって 『星の王子さま』を投げる(1枚目の写真、矢印)。そして、「手紙書く」と約束する(2枚目の写真)。エリックも、「僕も」と、約束する(3枚目の写真)〔このフェリーは対岸の岬の先端のポワント・ドゥ・グラーヴ(Pointe de Grave)行き。しかし、エリックが行かされるのはラ・ロシェル(La Rochelle)にある矯正院。ポワント・ドゥ・グラーヴは、ロワイヤン港の南南西6キロ、ラ・ロシェルは北60キロ、まるで方向が違う〕
  
  
  

エリックは、護送警官に付き添われてラ・ロシェルの矯正院に連れて来られる。門まで迎えに出たのは寮監。警官は、「判事さんの電話番号だ。些細な事でも相談できる」と紙を渡すが、エリックは渡された紙をその場で捨てる。警官は、「この、意地っ張り」と言い、紙を自分のポケットに入れると、2人を追いかける(1枚目の写真)。建物内に入ると、寮監は、エリックを共同寝室へ連れて行きながら、「もうすぐ授業が終わるが、落ち着く時間はあるだろう」と言い、ベッドの1つを与える。エリックは荷物を少し出すと、いつも通り、カバンをベッドの下に入れる。すると、年上の収監生3人が走って部屋に入ってくると、そのうち1人が壁際に追い詰められ、遅れて入って来た背の高い収監生(ボス)に、「止めて! 頼む!」とすがるように頼む。背の高い収監生は、許しを乞う収監生をベッドに叩きつけるように倒すと、手下の1人が「もう一度やったら、殺す」と脅す(2枚目の写真、矢印はエリック)。ボスは、背後で見ているエリックに気付き、手下に 「見ろ」と注意喚起。さっそく手下がエリックの所に行き、「何も見てない! いいな!」と命令するが、エリックは黙ったまま。「返事しろ! 俺は、モモだ」。もう1人が、「彼は、ペチョ。覚えとけ!」と言うが、エリックは返事をするどころか 相手の顔すら見ていない。ペチョは、「どこ、向いてやがる!」と襟をつかむが、エリックは睨み返しただけ(3枚目の写真)。「怖くないのか?」。返事なし。モモ:「俺たちのベッドの準備は、そこのチビ野郎がやってた」。ペチョ:「今日から、新入りのお前がやれ」。モモ:「分かったな、ぼんくら?」。最後に、ボスが、「ちゃんと、やれ。折り目のあるシーツじゃ、眠むれん」と言って出て行く。エリックと同年代の “チビ野郎” は、「気をつけろ。あいつら凶暴だ。僕はレミ。君は?」と笑顔で訊くが、それに対してもエリックは憮然とした表情を見せただけ。
  
  
  

一方、動物園では、ヤンが白馬を撫でていると、叔母がスカートを持って寄って来くると、「これ、試着して」と言う。「イヤ」。「サイズだけでも、知りたいの」(1枚目の写真、矢印はスカート)。「はくけど、学校にいる時だけ」。ヤンは逃げ出す。叔母が走って追いかけると、ヤンの行く手にはピエールがいて、ヤンはその後ろに隠れる。叔母は、「スカートは、いつも はくべきだって、諭してもらえる?」とピエールに頼む。ピエールは、「コリンヌ〔叔母〕の話、聞いただろ?」と、叔母から受け取ったスカートをヤンに渡す。ヤンは、スカートをはくが、前後逆。叔母は、「わざとやってるわ。前後 逆さまよ」とイライラ。ヤンは、「おバカな格好」と、開き直る。ピエールは、「かもしれんが、可愛いぞ」と言った後で、「友だちには、ちゃんと住所教えなきゃ」とヤンにクレームをつける(2枚目の写真)。「手紙来た?」。「ああ、コルドゥアン灯台宛に。だから、港湾局に届いた」。ヤンは、スカートを脱ぐと、港湾局に行こうと走り出すが、ピエールは、「おい、どこに行く? 手紙だ」と言って、取り出して見せ、ヤンは笑顔で取りに戻る(3枚目の写真、矢印は手紙)。
  
  
  

夕方になり、ベッドの準備をしなかったエリックは、「ベッド、準備しなかったな!」と、モモによってベッドから引っ張り出され、ペチョが、「覚悟は できてるな?」と言い、ロッカーの中に押し込められる(1枚目の写真)。モモ:「明日やらなかったら、一生 出さないぞ!」。ペチョ:「何とか言え!」。その時、部屋の外から寮監の声が聞こえる。「一体、何なんだ?!」。ボス:「おい、ずらかるぞ」。寮監が、「何やってる?!」と怒鳴りながらドアを開けると、3人は黙ってドアから出て行く。寮監は、エリックがベッドにいないことに気付かず、ドアを閉める。すると、先ほどの親切なレミがロッカーまでやってきて、「みんな最年長だ。卒業するまで逆らうなよ」と忠告。エリックは、ここに来て初めて口をきく。「僕のノート、渡して」。レミは、ベッドの上に置いてあったノートを ロッカーの扉の隙間から入れる(2枚目の写真)。そのあとには、親切にも、自分の懐中電灯も押し入れる〔扉が余程歪んでいる〕。エリックは、ありがとうも言わずに受け取ると、懐中電灯を点け、ノートに書き始める。そして、流れる独白。「僕は元気だ。昼は学校、夜は寝る。男子校だけど悪くない。『大切なものは、目に見えない』という言葉〔星の王子が、狐から教えられる秘密〕。その意味が分かった」。
  
  
  

エリックの独白は続くが、背景映像は、それを見るヤンに変わる。「君が 暗記するほど この本が気に入り、話に 魅せられている訳も。王子は、自分の星に帰ると話すけど、彼の友だちは 悲しむ必要などないんだ〔星の王子が、“ぼく” と話す最後の会話〕。夜空の星を見上げれば、どこかで王子が笑っている。君は、灯台を見るだけでいい」。ヤンは船の上で これを読んでいる(1枚目の写真)。ヤンは、読んだ後、返事を書く。「叔母さんは変わった。いつも、僕と一緒。ピエールも、よく家に来る。背中の傷が痛まないといいね。それに、校則が厳しくないと。海が、より大きく見えるんだ。君が去ってから」。ヤンは、灯台の壁の壇上で手紙を書いている(2枚目の写真)。それを見たピエールは、叔母に、「熱心に書いてるな」と感心する。「同年代の男の子に、手紙なんて書かなかった」。ピエールは、灯台に手を加えている作業員達を指して、「あいつらを、見てごらん」と叔母に言う。それが聞こえたのか、ヤンが 「変なもの、付けちゃって!」と作業員を批判する。それを耳にしたのか、作業員の1人は、みっともないアンテナを前にして、「あんた! 接続が済めば、標識灯は遠隔操縦できる」と、ピエールに向かって言う。「こいつが俺の代わりを?」。「これは、風速80mに耐え、24時間動き続け、バカンスも取らない」と、相手をあなどるように言う。「バカンス取るのが悪い?」。「機械にやらせるのは難しいが、人為的ミスは100%なくなる」(3枚目の写真)。「波には、もつのか?」。「こんな所まで 波が届くもんか」。「波はな。だが、しぶきは掛かる」。「30mもあるんだぞ!」。「掛かるさ。嵐が来ればな」。「コンピュータは、そんな予測出さなかった」。「コンピュータ? ありゃバカだ。白い波頭が見えるだろ? じき、猛烈な強風が吹き荒れる」。「嵐は長く続くのか?」。「1週間以上も」。
  
  
  

同じ日の夜。エリックは、ヤンから送られてきた灯台の絵葉書の裏から懐中電灯を照らして “灯台が点灯している” ように見せて楽しんでいる(1枚目の写真、矢印)。明かりが漏れているので、その様子を、ボスがロッカーの隙間から見ている(2枚目の写真)。その どこに感心したのかは分からないが、彼は、「モモ、グラフ〔ペチョ〕、出してやれ」と命じる。モモは扉を開けると、「懲りたか? 明日は、ちゃんとやれ。さもないと、一晩中だぞ」と言う。エリックは、黙ってロッカーから出ると、ベッドに横になり、ノートに書き始める(3枚目の写真)。それを見たペチョは、「奇妙な ガキだ」とボスに言う。ボスは、ベッドで横になってバラライカを手に持っているが、何も言わない。
  
  
  

灯台では、夜になってヤンが眠りかける。ピエールは、ヤンをベッドまで運び、靴を脱がせると、そのままベッドに寝かせ、額にキスして 「お休み」と言う。ヤンも 「お休み」と返し、ピエールはヤンの鼻を 親し気にトンと叩く(1枚目の写真)。ピエールは、コリンヌに、「灯台の光源は、ずっと石油ランプだった。真っ先に電化したから、配線は剥き出し」と言いながら、白い壁の上を這う黒い電線を修理し、「断線しかけた事も」と話す。「女性の指じゃないと無理よ」。「役所の連中から、いつも言われてた。手伝ってくれる女性が要るって」。「仕事は それだけ? 婚姻届けを出すなら、知っておかないと」。「マリーのためじゃないか」。「私は、どうでもいい?」。ここから、若かりし頃の話に飛ぶ。「なぜ、来なかったの? ヨットに乗せてやるって」。「マストが折れて、レースは最下位に」。「関係ない。なぜ、私から離れて行ったの?」。「君は、動物園の園長の娘。僕は、漁師の伜。君の周りには、取り巻きが… 内科医、外科医、薬剤師の息子」。「でも、興味なし」。「僕もさ。ずっと、船乗り一途」〔2人とも未婚のまま〕。次のシーンでは、2人は裸になって同じベッドに寝ている。「あなたは、近寄り難かった」。「なぜ?」。「だって、女の子が一杯… 魚屋、仲買業者、漁業会社の娘」(2枚目の写真)。そして、キス。しばらくすると、目を覚ましたヤンが部屋に入ってくる。そして、2人が仲良く同じベッドで眠っているのを見ると、笑顔になり(3枚目の写真)、部屋のランプを消す。
  
  
  

翌日の夕方、エリックがベッドでノートに書いているのを見つけると、ペチョが 「この、ぼんくら!」、モモが 「まだ、分からんのか?」と罵り、「このまま 眠れると思うな!」と言うとベッドから引っ張り起こし、「じゃあな、楽しい夜を!」とロッカーに押し込む。エリックは、「明日か、明後日、見てろ!」と、連中に向かって初めて口をきく。「待ってるぜ、弱虫!」。そこに、ボスがやって来て、「開けてやれ!」と命じる。「言いつけ、守らなかったんだぞ!」。「開けろと言ってるんだ!」。ペチョが開けようとするが、開かない。「鍵かけてやがる!」。「殴られるのが怖いんだ!」。「出て来い、くそガキ!」。レミは、「放っといてあげなよ!」と助け船。ボスが、見かねて 「出て来るんだ!」と言うが、それでも出て来ない。騒ぎを聞きつけて寮監がやって来る。「こら! 何を騒いでる!」(1枚目の写真)。寮監は、まっすぐロッカーに行き、「そこで何やってる? 出るんだ」と、エリックに命じる。そして、出てきたエリックに、「パジャマに着替えて」と言う。そして、さらに、「誰が 閉じ込めた?」と訊くが、エリックは寮監にも黙っている。「答えろ!」。それでも返事がないので、寮監は、「誰がやった?! ウソ寝はやめろ! 答えんのなら、明日聞くぞ!」と、悪ガキどもを強く牽制する。そして、振り向くと、エリックがシャツを脱ぎ、傷付いた背中が剥き出しになっている。それを見た寮監は、あまりのひどさに 「誰にやられた?」と訊き、治療が必要だと感じ 「来なさい」と大急ぎで連れ出す(2枚目の写真)。2人がいなくなると、モモは、ボスに 「全部チクるぞ! 俺たち厳罰だ!」と言うが、ボスは 「奴は、しゃべらん」と言う。ペチョ:「弱虫野郎のせいで、ムチは嫌だ」。ボス:「背中 見たろ? お前の方が、弱虫だ」。
  
  

翌朝、エリックは病院に連れて行かれる。判事も呼ばれている。判事は、「喧嘩かな? それとも、虐め?」と医師に訊く。「いいえ、背中のは古い傷です。骨折部分が、自然治癒しつつあります」。「骨折?」。「ええ、肩甲骨にひびが」。エリックは、傷の消毒に痛そうな顔をする(1枚目の写真)。「発見できて幸いでした。殴っただけでは、こんな傷には」。「傷を受けてから、何日くらい?」。「2週間か、3週間〔里父の折檻→即日逮捕→判事の決定→フェリー→矯正院に着いて2・3日目なので、せいぜい1週間のはず〕。若いから早く治ります」。「ここで、やられたんじゃないな」。「担当者は、彼が一言もしゃべらないと言っています。罪悪感が背景にした、認知できる現実からの退却行動… “引きこもり” です」。「原因は?」。「母親の死への責任感です。治療できたはずだと確信を」。判事は、エリックに、「ペルチュイさんに叩かれたのかい?」と尋ねるが、エリックは答えない。「だから、階段から突き落としたんだ?」。それでも答えない。「君が、私をどう思ってるか 知っている。でも、話してくれなければ何もできない」(2枚目の写真)「話したくないなら、書きなさい」と、メモ帳とペンをテーブルに置く。エリックが何もしないので、「他の子が、君のような目に遭うかも。彼がやったのなら、ちゃんと処罰する」とも言う。すると、エリックは、「他人を痛めつけることが好きな人がいる」と書く(3枚目の写真)。それを見た判事は、「判事は 大人も裁くんだ。ここは嫌だろ? 他の里親を探してもいい」と言う。すると、ようやくエリックが口を開く。「イヤだ。もう、うんざり」。それだけ言うと 「ママ」と言って泣き始める。「僕もう、ダメ」。可哀想に思った看護婦がエリックを抱き留める(4枚目の写真)。
  
  
  
  

一方、女子校でのヤン。黒板ではなく、窓の方をずっと見ていると(1枚目の写真)、教師が、「ルゲレックさん」と何度も呼ぶ。ようやくそれに気付いたヤンが、前を向いて「はい」と言うと、「授業を聞いていましたか?」と訊かれる。「はい、先生」。「話す時は立ちなさい」。立ち上がったヤンに、教師は、「授業の内容は?」と訊く。黒板にフランスの地図が掲げられていたので、「フランス?」と 迷いつつ答える(2枚目の写真)。「確かに、地図はありますね。でも、質問とは無関係です。さっき、呼ばれるまで、さぞや重要な事をしていたとか?」。そう言うと、ヤンの机の上にあった手紙を取り上げ、「授業中に手紙を!? 通知表に書いておきますからね」と叱る(3枚目の写真)。
  
  
  

エリックが連れて行かれた翌日(あるいは、数日後?)、レミが、ボスに、「新入り見た? 密告して優遇かな?」と話しかけると、「あいつの口は堅い」と言われる。「どう堅いの?」。「重傷なのに、黙ってたんだぞ」。そして、何気なく窓の外を見ると、エリックが、木の根元に座っていて、そこに、モモとペチョが近寄って行く。それを見たボスは、走って下に向かう。その “下” では、モモが、「ほざいたな? ここには、隠れるロッカーないぞ!」と、密告が既定事実だとばかりに言い掛かりをつける(1枚目の写真)。襟をつかまれて怒ったエリックは、落ちていた石でモモの口を叩く。モモは地面に倒れる。その隙に、エリックは逃げ出す。その後を、モモが 「殺してやる!」と追い掛け、ペチョも続く。そして、その後を ボスが追う(2枚目の写真、黄色の矢印はエリック、青の矢印はボス)。エリックは、柵の先にある鉄の扉から中に逃げ込み、後を追って入ろうとする2人を押しのけたボスが、「来るな!」と命じて中に入って行く。エリックは、ボスがゆっくり歩いてくるのを見て、置いてあった鉄棒を持って構える。ボスは、「お前、タフだな。棍棒で(殴られてケガをした)?」と訊く。エリックは首を横に振る。「そうか。何も、言わんでいい。可愛いい女の子なんだろ?」(3枚目の写真)「ベッドは やらんでいい。手紙で、時間ないかなら」。そう言うと、ベッドに置いてあった絵葉書を渡す(4枚目の写真)。扉を開けて出てきたボスに、モモは、「何で、殴らない?」と訊くが、ペチョは、もっとひどいことを言う。「この “ロ助”、あのガキが怖くなったのさ」。ボスはペチョの顔に思い切り自分の顔をぶつけて、地面に倒し、「のぼせるな。このボケが!」と捨て台詞を残すと、去っていく。
  
  
  
  

ある日、ヤンが 学校の帰りに郵便受けを覗くと(1枚目の写真)、中は空。すぐに叔母に会いに行き、「手紙 なかった?」と訊く。「いいえ」。ヤンは、「もう 2週間も」と悲しそうに言う(2枚目の写真)。「やる事が一杯あって、時間に 気付かないのよ」。ヤンの表情は変わらない。「何か、食べる?」。首を横に振る。
  
  

先程のシーンで、「2週間」という言葉があったので、矯正院でも2週間以上経過している。エリックとボスはとても仲が良くなっていて、ボスが、「やってみるか?」と バラライカを弾かせると、エリックは簡単なメロディーを弾き、2人は笑顔になる(1枚目の写真)。それから何日経ったのかは分からないが、ある夜、エリックがモモのロッカーを開け、中を探す。モモが、「何してる!?」と怒って訊くと、その胸をボスが押え、「動くな!」と怒鳴る。一方、エリックも、「手紙、どこへやった?!」と怒鳴る。モモ:「イカレてる!」。ボス:「愛は神聖だ。お前がやったのか?」。エリック:「どこへ やったんだ?!」。ボスはモモのシャツをつかむと、体を持ち上げ、「言うんだ!」と迫る。「触っちゃいない! いつも、持ってたろ!」。「前は、毎日届いてた。今はゼロだ。誰かが隠してる!」。「バカな! 俺が、どうやって?」。「他に いるもんか!」。「俺じゃない。手紙を配ってる奴だ」(2枚目の写真)。その言葉で、ボスは、「分かった」と矛を収める。その夜、ベッドの上で10枚ほどの絵葉書を前に泣いているエリックに、ボスは、「彼じゃない。嘘ついたら、どうなるか知ってる」と言う。「誰かが 手紙を盗んでる」。「なぜ、確信が?」。「彼女は、絶対書くのを止めない」。「じゃ、ここの誰かが止めてる。モモじゃない。寮監かも。手紙を知ってる。もし、あいつなら、院長室にあるはずだ。難しいな。侵入できない。心配するな。格言がある。『銀行を襲えないなら、輸送車を襲え』。この場合なら 郵便箱だな」(3枚目の写真)。
  
  
  

ヤンは、叔母の机の上にあった、「エリック・マラール/ラ・ロシェル矯正院」宛の封筒を手に取る(1枚目の写真、矢印)。そして、外にいる叔母の横を通って出て行こうとする。「どこかに、出かけるの?」。「港まで」。「今? でも、お昼 食べてないわよ」。「お腹 空いてない」。「朝も食べてないじゃない。何一つ。気分でも悪いの?」。「お腹 空いてない」。ヤンは、港に行き、叔母がエリックに宛てた手紙を読む。「マリーが心配してるの。新しい友だちができたから? でも、お願い、手紙 書いてあげて! 少しでも、すごく喜ぶわ」(2枚目の写真、矢印)。そこに、ピエールが灯台からモーターボートでやって来る。ヤンは、叔母の手紙を丸めて捨てる。桟橋に着いたピエールは、丸めた紙を見て、「僕のボートはゴミ箱かい?」とヤンに訊く。さらに、「衛星に仕事を盗られた。いつも、君のそばにいられる」と言うと、同じ格好でずっと動かずにいるヤンのそばに寄り、「きれいな目が悲しそうだ。どうしたのかな?」と訊く。「彼に忘れられた」。「恋人を忘れるはずないだろ? きれいな目の水兵さんを」。この言葉で、ヤンが少し笑顔になる。ヤンは、「彼女〔叔母〕と、話さないの?」と訊く。「話す事がない。愛って複雑なんだ。コリンヌを10年待った」。「なぜ、何も話さなかったの?」。「君たちみたいに強くなかったから。いつか、一緒になるんだろ? エリックは悪い事をしたけれど」。「彼は悪くない。殺されかけたの。狂ったようにベルトで叩かれて。何も言わないのは、僕のせい」(3枚目の写真)。それだけ言うと、ヤンは泣きながら去って行く。一方、矯正院では、夜遅く、ボスがエリックを連れて外に出る柵の手前まで連れて行く。そして、エリック宛の封筒を作り、「これを、郵便箱に入れる。明日 届かなかったら、犯人が分かる」と言う。エリックは、「あいつさ、絶対」と言う(4枚目の写真)。「誰だ?」。「判事。彼女に 手紙出して欲しくないんだ。僕を信じてないから」。ボスは柵を乗り越え、封筒を郵便受けに入れに行く。
  
  
  
  

女学校のランチの時間。ヤンは、隣の子に、「チョコ・ムース、食べないの?」と訊かれ、ムースの入ったカップを床に皿ごと捨てる。それに驚いた教師が飛んでくる。ヤンは教師から逃れるように立ち上がるが、ずっと何も食べていないので、気を失って床に倒れる(1枚目の写真)。すぐに病院に連れて行かれ、叔母が呼ばれる。ベッドの脇に座った叔母は、ヤンの手を取るが、彼女は、ほとんど動かない(2枚目の写真)。そこに、看護婦が、「お食事の時間よ、お嬢さん」と言いながら、トレイを持って入って来る。叔母は、「食べないと、マリー」と言うが、ヤンは、「毎日書くって言ったのに」としか言わない。看護婦が、「水分だけでも補給しないと」と言ってコップに入った水を叔母に渡すが、ヤンは、叔母が口に流し込んだ僅かの水を咳いて吐き出す。
  
  

エリックは、日中、大事なものを布バッグに入れて背負い、高いコンクリートの壁を 鉄パイプをつかんで登り、外に逃げようとする。それに気付いたボスは、2階の窓から「エリック!」と呼んで、止めようとするが(1枚目の写真)、エリックは逃げ出す。エリックが、通りでヒッチハイクをしようと腕を出していると、そこに、抜け出してきたボスが走ってくる。「行かせて!」。「だめだ! ヒッチハイクする気だろ?」。「行ってみせる!」。「その後は? 逮捕されるぞ」(2枚目の写真)「俺みたいに なりたいか? 18才まで収監だぞ!」。「捕まるもんか! 一通も届かない! 彼女の身に何かが!」。「寮監は、何とかする。月曜までに戻れば、何も言われない」。「僕は戻らない」(3枚目の写真)。その後の、ボスが素敵だ。「なら、汽車に乗れ」と言ってお金を渡す。「俺には、いなかったが、お前は俺のだ」。エリックは、「母さんが言ってた。お金をもらった時は、代わりに贈り物を」と言うと、「もう、暗記したから」と『星の王子さま』をボスに渡す。
  
  
  

ピエールは、判事の事務所に怒鳴り込みに行く。「矯正院送りにして、子供たちを別れさせただけで満足せず、こんなことするなんて!」。「何のことですか?」。「あんたには、ただの事件番号なんだ!」。「ルゲレック・マラールの件は、よく覚えていますよ。先日も、マラール君と話しましたし」。「私は、何度も電話した。だが、あんたの許可がないと、ダメだと!」。「規約ですから。未成年者の」。「未成年者どうしは、話す権利もないと? 手紙すら?」。「よく 分かりませんが」。「なぜ、手紙の交換を禁止したんだ?」。「禁止などしてません。マラール君とは、有益な関係を見つけました」。「有益な? 彼は、半殺しになるまで殴られたのに、あんたは見過ごした!」(1枚目の写真)「マリーは、食べるのを拒否して入院。あんたじゃないなら、誰が止めたんだ?」。「知りません。でも、必ず見つけます」(2枚目の)。そして、判事はボルドーの矯正院に電話を掛ける〔前は、ラ・ロシェルだった? 叔母はラ・ロシェル矯正院宛の手紙を書いていたが、そこでも書いたように、フェリーの行き先とラ・ロシェルは逆方向だった。しかし、ボルドーなら方向は正しい。先のシーンが脚本ミスなのであろう〕
  
  

エリックは、動物園内の叔母の家までやってくる〔汽車を使ったということなので、調べてみると、ボルドー~サント間が最短で70-80分、そこで乗り換えてロワイヤンまで約30分〕。叔母は病院でヤンにつきっきりなので、家には誰もいない。しかし、幸い、ピエール用のメモが、外のテーブルの上に置かれていた(1枚目の写真、矢印)。そこには、「私はマリーの病室にいます。27号室です」と書かれてあった。その病室では、叔母が、以前にエリックから来た手紙をヤンに読んで聞かせている。「海は 美しい。灯台が すべてを隠してくれるから。大切なものは、目に見えない」(2枚目の写真)。そこに、5人を引き連れて医師が回診に訪れる。医師が 「お嬢さんの容体は?」と訊くと、担当の看護婦が 「安定してるようです」と、いい加減な返事をする。「食べていますか?」。今度は、叔母が 「何一つ、受け付けません」と、危機的な状況を訴える。医師は 「何ですと?」と驚く。「何も、口にしていない?」。無責任な看護婦は、「実習医が、点滴を続けています」と報告し、医師から 「報告すべきだったな!」と叱られる。「起き上がれますか?」。「拒んでいます。衰弱していて、立てません」。これを聞いた医師は、心配になり(3枚目の写真)、「奥さん、こちらへ」と、別室へ呼ぶ。そして、「拒食症と思っていましたが、より深刻です。貧血が進み、血圧も低下しています」と説明する。叔母は、「飲ませようとしても、吐き出します」と、いい加減な看護婦が医師に伝えなかった症状を話す。「典型的です。胃が使われないため痙攣を起こし、何も受け付けません。ご存じですか? 何が、彼女を自傷行為に走らせているのか」。「長い話です」。「悪い話?」。「美しい話です。少年の」。
  
  
  

その “少年” が、ヤンの部屋に こっそりと現れる(1枚目の写真)。そして、「マリー」と呼びかける。「マリー、僕だよ! 目を開けて」。その声で、ヤンは上を向くと、笑顔になり、「戻って来てくれた」と喜ぶ(2枚目の写真)。「今、着いたんだ。もう、離さない」。そう言うと、ヤンの額に手をのせて、微笑む(3枚目の写真)。医師の部屋では、「まさか、まだ10才なのに!」と、信じようとしない。「なぜ、誰も理解しようとしないの? 恋してるのよ! 死物狂いで!」。そこに、看護婦が飛び込んでくる。「先生、娘さんが いません!」。「いない?」。「所持品を持って、どこかへ!」。「病院中に通報だ! 遠くには行けまい」。医師は、男性の看護師に、「失態だ! 少年が患者を連れ出し、君は それを黙認した!」と、強く叱咤する。看護師は反論する。「誰に分かります? 少年の話では、妹が足を捻挫したとかで、抱いていました」。「病気だから当然だ!」。「いいえ、笑って ケーキを食べてました」。「食べていた? 本当に同じ子かね?」。
  
  
  

2人は自転車に乗り、ヤンが、道案内をする。「森を通れば、見られずに海に行ける」(1枚目の写真)。港では、ピエールと判事がいて、赤いジャンバーの男が、「ここから ボートに乗ってれば、俺が見てるから分かる」と証言する。それを聞いた判事は、「なら、森にいるに違いない。警察を呼ぶから、同行するかね?」と、ピエールに訊く。ピエールは、「2人は、絶対、灯台に向かっている」と言うが、誰も信用しない。しかし、その頃、2人は、ピエールのモーターボートに乗って灯台に向かっていた。エリックは、「灯台の手前の砂浜まで?」と、ヤンに訊く(2枚目の写真)。「うん」。砂浜に近づくと、2人でボートを引っ張る。エリックは、「やったな!」と言うが、ヤンは、「めまいがする」と元気がない。2人は、砂浜の上をゆっくりと走る。「まだ、めまい する?」。ヤンは、少し元気になっていて、笑う。そして、灯台の基礎の石積みに設けられた梯子を、エリックがヤンの手を引いて登る(3枚目の写真)。灯室まで登った2人〔何日も食べていないヤンは、どうやって311段(20階分)もの階段を登ったのだろう?〕。ヤンは、ぐったりとしている。「大丈夫?」(4枚目の写真)。弱々しく、「うん」。「違うよ! 真っ青だ!」。「階段、早く登り過ぎた」。「りんご以外の物、見つけないと」。「ピエールは いなくなったけど、牡蛎がある。牡蛎 好き?」。「うん」。「ダメだ、殻を開ける物がない」。「待って、運ぶから」。そう言って、エリックはヤンを抱くが、311段の階段を抱いたまま降りたのだろうか? なぜかというと、次のシーンで、ヤンは、灯台の下にある石垣の上から、海に向かって釣り竿を垂らしているから。しかし、干潮なので、何も釣れない。
  
  
  
  

ここからが、映画が最も盛り上がる部分だが、一番の欠点でもある。何が欠点かと言うと、時間の推移が極めて恣意的かつ意図的であること。釣りの直後のシーンでは、辺りは真っ暗。ヤンは、疲れてエリックの膝の上に横たわっている。「何か 食べ物を見つけないと。僕もペコペコ。でも、彼女が心配だ。マリーは眠ってるんじゃない。意識を失ってる」(1枚目の写真)。場面は、すぐ翌日に。昨日から続く警察による森の中の調査が映る。灯台では、エリックがどこかで探し出した缶詰を2人で食べている(2枚目の写真)。エリック:「運よく、ナイフ持ってた」。ヤン:「よく見つけたね」。「缶詰ぐらい、どこかに隠してあるんだ」。その後、2人は、再びモーターボートに乗り、灯台の付近で釣るのではなく、なぜか、対岸まで戻る。そして、エリックは、釣った小魚をヤンに食べさせる。「食べろよ!」。「5匹も食べた」。「食べないんなら、病院に戻れ!」。「イワシなんか釣ったら、海に突き落とすから!」(3枚目の写真)。
  
  
  

一方、森の中の調査が全く進まないことから、業を煮やしたピエールは、「なぜ、ヘリコプターで灯台を調べない?」と批判する。判事は、「他に、隠れていそうな場所は?」と訊く。「マリーは、すべての入江と 海岸のトーチカを知ってる」。署長:「大変な捜査だ! でも、見つけます」。ピエール:「君は、2人を知らん。2度も、捕まることはしない」(1枚目の写真)。そのあと、ようやくヘリコプターが灯台に向かって飛ぶが、辺りにボートがないので〔ボートなしでは辿り着けないので〕、灯台にいる可能性は否定される。「海にいたら、乾草の中で針を捜すようなものだ」。そこに、子供がボートに乗っているのを見たという情報が入って来る。その頃、2人の乗ったモーターボートは灯台に向かっている〔この点の矛盾は、次節で詳しく検証する〕。そして、時間は一気に夜に。ヤンの叔母、ピエール、判事、“腐れ女” が港にいる。“腐れ女” は、「あの子たちが一緒にいると、いつも大騒ぎ!」と 判事に向かって意地悪く言う。それを聞いた叔母は、すぐに、「お互いを必要としてるから、別れて いられないのよ」と、暴言を諫める。「何を おかしな事を? まだ10才なんですよ!」。「手紙のやり取り、見たでしょ?」。ここで、決定的な発言。「私が遮断しなかったら、何が起きていたやら」(2枚目の写真)。そう、2人をこんな事態に陥らせた張本人は “腐れ女” だった。なのに、自分の愚かな行為を反省するどころか、自慢している。叔母は、「あなたには、これから 一切の干渉を、禁じます!!」と怒りをぶつける(3枚目の写真)。「脅迫するの?」。ピエール:「そうだ!」。「判事さん、メモして下さいね」。叔母:「あんたや、判事なんか、どうでもいい! 子供たちを、破滅に追い込むなんて!」。ピエール:「言っても 分からん連中だ」。
  
  
  

矛盾点。1枚目の黄枠の写真は、前節の1枚目の写真の直後の映像。まだ明るい中を、2人は灯台に向かってモーターボートを走らせる。ところが、前節の3枚目の写真の直後の映像が、2枚目の写真。モーターボートは高速で走っているのに、辺りは真っ暗。2人がいた海岸と灯台との距離は8キロしかなく、しかも、2枚目の写真のボートは、まだ灯台に着いていないので距離は5-6キロ。モーターボートの構造がよく分からないが、砂浜に乗り上げることを前提としたインフレータブルボートだとしたら、スピードは30ノット(時速55キロ)ほど。5-6キロを走るには、どう長く見ても10分あれば十分だ。それなのに、なぜ、昼間が夜に変わるのだろう? 絶対におかしい。理由は簡単で、それについては、この説の後半で述べる。叔母とピエールは、港湾局の指令センターのような場所に来ている(3枚目の写真)。天気は荒れ始めていて、天気予報は、「強風が、1時間は吹き荒れる」という状況。その時、レーダーに灯台に向かうモーターボートが映る。4枚目の写真は、荒天になったので、ヤンの指示で救命胴衣を着けた2人。正面には、灯台が見えているが、灯室に雷が落ち(5枚目の写真)、以後、ライトが消えて真っ暗になる。灯台を真っ暗にするには、夜でないといけない。これが、“昼間からいきなり夜” にした理由。エリック:「灯台の光が消えた!」。ヤン:「大丈夫! 目を閉じてても行ける!」。
  
  
  
  
  

ピエールは、救助に向かうタグボートに同行する。判事も 「私も、行くぞ!」と申し出る。“腐れ女” が、「そんな下らない事、お止めになって!」と言うと、ヤンの叔母は、「黙れ!!!」と怒鳴り付ける。侮辱されたと思った “腐れ女” は、「判事さん!」と、叔母の処罰を求めるが、判事も、「黙れ! 君の話は うんざりだ!」と 叱り飛ばす〔せいせいするシーン〕。タグボートは、港湾局の職員2名にピエールと判事が加わり、離岸する。タグボートは、真っ暗な海を突進する(2枚目の写真)。すると、前方に、ピエールのモーターボートが見えてくる。しかし、誰も乗っていない。指令センターでは、係員が叔母に、「ボートを見つけました」と報告する。「子供たちは?」。「いません」。一方、ピエールは、ボートに乗り移ろうとして、職員に、「ピエール、やめろ! 何の役にも立たん!」と止められ、「溺れてしまった!」と、悔し涙を流す。その時、叔母から無線が入る。「ピエール。マリーは、そんなバカな子じゃない! 見つけてちょうだい。海に落ちただけ。お願いするわ。2人とも、まだ生きてる」。ボートに乗り込んだピエールは、「本当だ! 救命胴衣がない!」と、2人が生きていることを確信する。判事は、「チャンスは、あるのかね?」と訊く。ピエールは 「行くぞ」と言い、判事も 「私も、そっちへ移る」と言い、ボートに乗り込む。職員は、「二重遭難だ!」と反対するが(3枚目の写真)、ピエールは 「信頼しろ!」と言ってロープを切り離す。
  
  
  

その頃、2人は、荒れた海を何とか泳いで、灯台のある島に上陸していた(1枚目の写真)。2人は、ずぶ濡れになっていたので、灯台の中に入ると、着ていた物を脱いで毛布で体をくるむ。ヤンは、無線機を作動させる。エリックが、「それ、光が消えても 動くの?」と訊くと、「バッテリーで動く」と答える。さらに、エリックの目の前にあったものを、「これ、何?」と訊くと、「昔の、石油ランプ」。「もっと、石油があったら、暖まれるのに」。「とっても、寒い」。エリックは、ヤンの背中をさする。2人は鏡の前。エリックの顔を見て、ヤンが 「何なの?」と訊くと、エリックは、ボスが使った 「可愛いい女の子」という言葉を口にする(2枚目の写真)。そして、初めてのキス(3枚目の写真)。
  
  
  

その時、無線機からいきなり声が聞こえる。「タグボート! どこにいる?」。「ピエールと判事がボートに。狂気の沙汰です!」。エリックは、「僕ら 捜査中?」と驚く。ヤンは、「灯台なしで、岩の間を操縦するのは危険なんだ」と心配する(1枚目の写真)。「引き返せ、ピエール! 戻って来れなくなるぞ!」。エリック:「ピエールが来る」。ヤン:「ボートじゃ無理だ」。「遭難して欲しくない」。「来て! 緊急箱に石油が」。「僕はランプを!」。ピエールは、ランプに火を点ける(2枚目の写真)。そして、2人で再度311段を登り、灯室まで行く〔先にランプを点けないと、真っ暗で登れない〕。ボートからは、灯台に明かりが点いたのが見える。ピエール:「あそこ!」。判事:「港湾局が、灯台の再点灯を?」。「違う! 本物の灯台守がいる!」(3枚目の写真)。ピエールは、さっそく無線で、「コリンヌ! 子供たちは灯台だ! 2人は 灯台にいる!」と知らせる。港湾局の指令センターでも、所長が、「本当だ。灯台が点灯している!」と確認する。職員:「この荒天で、よく辿り着けたな。どうやって再点灯を?」。「分からんが、2人は奇跡を 起こしたんだ」。
  
  
  

その音声が無線機から流れたので、ヤンは、「ピエールが助かった!」とエリックに言い、トランシーバーに向かって、「僕たち、いいことだってできるんだ!」と話す(1枚目の写真)。それを聞いた叔母は、「マリー、エリック、すぐ行くから。聞いてる? 待っててね。返事して」と言う。それを聞いたヤンは、「捕まったら、また引き離される」と心配する。エリックは、「誰にも捕まらない所に行こう」と言う(2枚目の写真)。ヤンは、トランシーバーに向かって、「僕たち、戻らない。邪魔しないで」と話す。叔母は、「お願い、マリー、聞いて! 2人とも私の子供よ。誰にも仲は 裂かせない! 聞いてる? ずっと一緒にいられるわ!」と、無茶をしないよう呼びかける。「未婚だから養子は無理、って言われたじゃない」。それに対し、叔母が何と答えようか考えている隙に、職員が勝手に、「灯台? 受信してますか?」と訊いたもので、ヤンは、トランシーバーのスイッチを切ってしまう。
  
  

これらのシーンはすべて夜。といっても、真夜中ではなく、ヤンとエリックもまだ寝ていない。ヤンは、「誰にも捕まらない所に行こう」というエリックの言葉に従って、一旦下まで降りたのに、また311段登って灯室の下の手すりまで行く〔午後9~11時?〕。なのに、次のシーンでは、いきなり朝!?!。ピエールと判事を乗せたモーターボートが灯台に向かって走る(1枚目の写真)。なぜ、矛盾を覚悟で朝にしたのか? それは、次のシーンが明るくないと困るから。明るくないと、ピエールに、灯室の下に立っている2人が見えない(2枚目の写真)。この状態で、ヤンは、「王子は、怖かったかな?」と、エリックに訊く〔星の王子は、蛇に噛まれることで、自分の小惑星に帰ろうとした〕。さらに、「悩んだと思う?」とも。しばらくして、ピエールと判事が、上陸して灯台に走って来る。それを見たエリックは、「上がってきたら、飛び降りる!」と上から叫ぶと、手すりの隙間から体を外に出し(3枚目の写真)、両手で手すりをつかみ、いつでも飛び降りられるような態勢を取る(4枚目の写真)〔どうやって撮影したのだろう?〕
  
  
  
  

ピエールと判事は、灯台に近寄って行く〔ある程度近づくと、上からは見えない〕。一方、叔母はヘリコプターで灯台の近くまで運んでもらう。叔母、ピエール、判事の3人は、灯室の下の手すりまで駆け上がる。それを見たエリックは、「近寄るな! 近づいたら 飛び降りる!」と牽制する(1枚目の写真)。ヤン:「僕もだ」。ピエール:「頼むから、中へ!」。「何を、今さら? 分かろうと しなかったくせに!」。判事:「電話しろと 言ったろ」。「手紙、止めたろ!」。ピエール:「誓って、彼じゃない」。ヤン:「じゃあ、誰が?」。「ガミガミ女」。判事:「彼女は処分する。二言はない」。ヤン:「また、嘘だ」。ピエール:「信じる事も大切だろ。厳しい試練だったが、最後には勝てる!」。エリック:「これから行く所では、誰も僕らを裂かない」(2枚目の写真)。「両親の事を考えたか? 生きてれば、全力で助けたはずだ。君らが死ぬのを見たいとでも? 違う! 必死で守ったろう!」。ここで、初めて叔母が話しかける。「私たち、一緒になるつもりなの。あなたたちが逝ったら、私たちどうすれば? あなたたちなしでは、生きられないの!」。この言葉で、2人は再度手すりをくぐり、安全な通路に戻る。そして、ピエールと叔母に抱きしめられる(3枚目の写真)。
  
  
  

タグボードが、ロワイヤン港に着くと、大勢の住民が待ち受けている(1枚目の写真)。ヤンとエリックは 幸せ一杯の叔母とピエールを嬉しそうに見る(2枚目の写真)。映画の最後は、ヤンがエリックの頬にキスするシーンで終わる(3枚目の写真)。「あなたは、そこにおられる。『汝、我を忘れまじ』ですね。僕の頬に、あなたの指の温もりが。僕の唇には、くちずけの息遣いが。僕は、誰にも言いません。あなたの秘密を漏らすなど。でも、人間でいる事に困ったら、夜、枕元で、あなたを呼びます」。
  
  
  

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